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みなみらんぼうのスローライフ
2003年〜2005年まで日経新聞夕刊に大好評
連載された“みなみらんぼうのスローライフ”が
帰ってきました。
ある人はなつかしく、又ある人は新鮮な共感を持って
らんぼうワールドをお楽しみください。
宮城県生まれの僕が、忘れられない古里の料理は「ズネモチ」である。
ゴマモチのようでもあるが、微妙に違う。
ズネはちょっと見るとナタネのような種子である。
中学になったころから作らなくなり、こちらも東京に出て忘れてしまっていた。
 それでも東京の友達には「宮城県というとズンダモチが有名だけど、ズネモチの方がおいしいよ」などと話したものだ。
しかし食べたことも見たこともない友達には、実感不足でピンとこない。
こちらもうまく説明しきれず、いつも話は尻切れトンボになった。
 それである時父に聞いたら「ズネというのは東北弁だよ。
本当はジュウネとかジュウネンと言うんだ」と聞かされた。
また自分で調べたらエゴマともいうそうで、むしろ全国的にはこちらの名の通りがいいのだという。
エゴマというけれどシソ科の植物だ。
 昔は近所の農家でもみなジュウネを作っていた。
植物油をとっていたらしいが、ナタネ油に押されて作る人がいなくなったのだという。
[日の当らない所でも育つし、寒さに強いから、作りやすかったんだけどね。今は作る人ないよ]
 その通り、ジュウネは姿を消した。
ところが昨年福島で突然ジュウネモチに出会った。
地元の人が地域振興の一環として、縄文時代から食べていたであろうとされる、ジュウネを作付し始めたのだ。
 「ああ、この味。この香り」と言うと、みんなは「ジュウネの味を知ってるのか?」と驚いていた。
「これを僕も作りたいなあ」と熱く語って別れたものだ。
 そして今春、僕の所に、ジュウネの種が届けられた。
はたして生前父が語っていたように、簡単に作れるものかどうか、僕はドキドキしている。
畑の先生、亀田不二雄さんに話したら「ジュウネなんて見たこともありませんよ」というから、自分の責任で種を蒔いてみよう。
他のシソと一緒の畑だと、交雑していい種ができないらしい。
まあ秋には僕のズネモチが食べられるかどうか。
見るからに小さな種であるが、どこか夢の種を蒔くような、ときめきを感じる。
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