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みなみらんぼうのスローライフ
2003年〜2005年まで日経新聞夕刊に大好評
連載された“みなみらんぼうのスローライフ”が
帰ってきました。
ある人はなつかしく、又ある人は新鮮な共感を持って
らんぼうワールドをお楽しみください。
 壊れた古いアンプがある。
二十五年近く前に東京・吉祥寺のジャズ喫茶店主のN氏に譲り受けたものだ。
高級海外製アンプで、いつもオーディオ店で眺めるだけのものだった。
それが二十万円。
格安だったが、僕は清水から飛び降りる気分を味わいながら買った。
 買ってしばらくして調子が悪くなった。
オーバーホールに出したら店主が「らんぼうさん、すごいヘビースモーカーなんだね。
中がたばこのヤニでベトベトだよ」と笑った。
 僕はたばこを吸わないので、何のことかと思ったが、そういえば僕のところに来るまでは、ジャズ喫茶で営業していたアンプだった。それから二十年近くトラブルもなく現役を続けた。
長女が生まれたばかりのころ、ボリュームを最大限に回したので、スイッチを入れた途端に爆弾が落ちたみたいな音が
したこともあった。
それでも壊れなかった。
二年前にN氏が突然、脳腫瘍(しゅよう)で他界した。
店の経営は順調で、アルトサックスを吹き、ジョギングをこなし、最近は山登りを始めたということだったから、そのうち一緒にと
話していた矢先の死だった。
 彼が亡くなってある夜、古いアンプを引っ張り出して灯を入れた。
スタン・ゲッツをかけると、風邪を引いて元気のないような音が出た。
しばらく使っていないと、音に潤いがなくなるのだ。
しかし、ブルーのイルミネーションを眺めているだけで、思い出が走馬灯のように巡った。
このアンプは青春を鳴らすことができる、数少ないアンプだ。
 二度目にスイッチを入れたら、ブスッ!という音とともに灯が消えた。
どうやら寿命を迎えた。N氏の元に帰ったのだろうか。
しかし、捨てきれず、元の棚に戻した。
 先日、N氏の奥様から、三周忌の知らせとともに、一枚のCDが送られてきた。
若きN氏のジャズ演奏と地元FM出演時のインタビューが収められていた。
僕はふとひらめいてオーディオ店に電話した。
あの古いアンプは修理できるか?と聞くと「大丈夫直りますよ、任せてください」との返事だった。
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