720ml瓶のウイスキーが1本で100万円、という広告を見た。買うつもりなどもうとうないが、ついじっと見つめた。100本の限定と書いてある・ところがなんと端の方に「売り切れ」とことわりがある。うーん、即日完売というやつなのだろう。
売り切れたのに広告を出すなんて、罪だなあとため息をつく。どこの誰が買ったのだろう。広告の下部には、100万円のものが買えない人のために、安い(といっても1本10万円もする)ウイスキーが並べてある。
いつだったか、サントリーの白州工場に取材でおじゃましたことがある。そのとき「特別ですよ」と言って飲まされた、30年もののピュアモルトはうまかった。油をなめたみたいにトロリと舌にまとわりつくので、ほんと舌鼓を打たざるを得ないのだった。あの30年ものは、いったい広告のランクだと幾らするのだろう?などと考え、口をぽかんと開けている自分が情けない。そばでカミさんが「ほらジャイアンツ1点よ」と言っているのに、上の空なんだから。
ウイスキーといえば古い昔の話が思い出される。おやじの宝物だったスコッチを、受験勉強と称して「11PM」を見ながら、ちょっとずつ飲んだことがある。飲んだ分だけ、安ウイスキーを足して、ばれないようにしたわけだ。
ある夜父に来客があり「とって置きのものですよ」ともったいぶりながら例のスコッチを出したからたまらない。僕はふすま1枚隔てた隣室で、息を殺して成り行きを見守るしかなかった。ところが客は「うっ」とうめいて僕の胆を冷やしたが、続けて「うまい!」と感嘆の声を発したので、心底ホッとしたのだった。
しかし僕はその夜から、酒は値段じゃないよ、気分だよ。と思うようになったのだが、いまだに悟り切れない。
先日はあるカメラ量販店で、幻の焼酎を見つけて息をのんだ。何と720ml、2千2百円とある。2本抱えてレジに行ったら、4万4千円と言われてドキリ、慌てて1本返した。2万2千円の焼酎ねえ、うーん、ホロ苦い味です。
つづく
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